イエバエは迅速で効率的な繁殖を行う最も高度に発達した昆虫の一つです。成虫は雑食で、高い順応性があり、そして“最も広い地域(地理的)にわたって殺虫剤に対する薬剤耐性を獲得した偉大な能力”を持っていると考えられています(Agarwal 1979:UNEP報告)。
殺虫剤に対する薬剤耐性は進化の過程なのです。後の祭りですが、何故このイエバエが様々な殺虫剤に対して急速に薬剤耐性を獲得したのかは明らかです。DDTに始まり殺虫剤に対する薬剤耐性の獲得は、1948年から1992年の間にデンマークにおいて、非常に入念な研究が行われました(Keiding 1999)。イエバエにおける薬剤耐性の研究によって、適応能力の低い(そして飼育の難しい)昆虫における薬剤耐性の獲得に関しても予防が容易になりました。
デンマークでは、畜産施設で残留噴霧用の殺虫剤を定期的に広範囲に使用したため、使用したこれらの薬剤は長期間にわたって部分的に効果を残したものの、一方では急速な薬剤耐性獲得につながりました。
主な原因は、大きな季節的変動とともに、個体群の半数が致死量に満たない量の殺虫剤に連続的に何世代も暴露していたことです。
それぞれの選択的な淘汰圧を受けた個体群は生き残り、子孫を残します。これらのハエのいくつかは殺虫剤に対応できる遺伝情報を持っているため、生き残ります。
子孫によって再び暴露は繰り返され、そして遺伝的な性質が強化されていきます。時が経つにつれ、薬剤耐性に関する選択的な淘汰圧とその他の環境適応要因 (特に冬期の耐久力)が、重なり合って最終的に個体群が薬剤耐性及び適応能力の両方を持つようになります。
一旦この段階に到達すると選択的な淘汰圧がなくなっても容易に薬剤耐性は消失しません。
デンマークにおいて、ハエの休息場所に塗布(ペイント)した砂糖入りの毒餌(ベイト)は1958年以降深刻な薬剤耐性を引き起しませんでした。一方では、集中的な空間噴霧剤の定期使用は薬剤耐性を持った個体群を作り出しました。
ハエの成虫及び幼虫に対する広範囲な活性を持つ殺虫剤の無差別な使用は個々の化学物質に対する薬剤耐性を作り出す恐れがあり、有益なダニ、ハチ、甲虫やクモを殺してさらに状態を悪化させてしまいます。
古い製品に対する薬剤耐性が、新しい製品にも薬剤耐性を与えることが明らかになってきており、いわゆる交差耐性もまた、重要な懸念材料となっています。
化学物質が昆虫体内の標的箇所をお互いに共有(例えばDDTと合成ピレスロイド) しているため、または広範囲に効果を示す機能(例えば薬剤の吸収を遅らせる浸透耐性)を持つようになったため、または両物質の分子に影響を与える特殊な生物化学的機能(例えば、エステラーゼ濃度の上昇)を持ったためなどが、交差耐性の理由と考えられています。
イエバエの個体群では適応能力を併せ持った薬剤耐性は安定する傾向にありますので、連続的な多剤耐性形質の獲得が見られます。
遺伝学的、生物学的及び作業上の多くの要因が、薬剤耐性の発達に重要な役割を果たしています(Georghiou 及びTaylor 1986)。これらの要因は”薬剤耐性リスク評価”の中で評価することができます(Keiding 1986)。
多剤耐性形質を打ち消す能力や、研究室内の選択的な淘汰圧下においても薬剤耐性を発達させない能力を持った、新規化合物が開発されるべきです(Keidingら 1991, 1992)。
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